特集 健康教育と公衆衞生教育
総説
民衆を行動にかりたてる動因
乾 孝
1
1法政大学
pp.2-8
発行日 1956年11月15日
Published Date 1956/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201745
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人間というものは奇妙な生物である。生物である限り,どんな下等なものでも,その生命を保つのに,何らかの意味で有効な行動以外はやらないのが普通なのに,人間の行動は,ただ「生きる」という限界をこえたものの方がむしろ大部分を占めているようにさえ思われる。だから,「生命」をもつて脅かしても必ずしもひとつの行動にかり立てうるとは限らない。
恋愛のために心中するなどというのはその極端な例だ。生物学的にみれば子孫をふやすためにこそ惚れ込んだのであろうに,2人とも自分の生命まで絶つてしまうというのはどうしたことだろう。しかもそれが「流行」しさえするのである。
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