講座
疫痢の治療と看護
長竹 正春
1
1東大醫學部
pp.46-49
発行日 1949年9月15日
Published Date 1949/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906532
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
日本では夏は濕氣が多い上に,暑いので疲れやすく,身體の抵抗力が極度に低下する時期であります。醫師や看護婦は毎年夏になるととくに消化器の病人で惱まされます。戰後の衞生状態はとても完全とはいえませんで,今年もまた胃腸病が多いことでしよう。小兒にとつて恐ろしい病氣は澤山ありますが,その中でも疫痢が一番の敵であります。この病氣の經過の急激なことは私共治療する者にとつて最もつらいことであります。死亡率はその年の流行の模様や土地の關係でずいぶん違いますが,その30ないし50%は24時間から數日間以内に死亡すると言われています。
原因はまだ明らかにされていませんが,一種の劇性の赤痢であり,原因體は,赤痢と同様志賀菌・大原菌などによるともいわれています。年齡は乳兒期に少く,幼兒期に多く,また年長兒になると稀にしかみられません。ですからこの幼兒期を疫痢年齡ともいわれています。質のよくない飲食物や食べ過ぎで消化が惡かつたり,風邪をひいていたりして,からだの抵抗力が弱つていると罹り易くなります。ブヨブヨ肥つている不斷丈夫そうにみえるこどもに多くみられます。
Copyright © 1949, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.