特集 最近の栄養問題
医科大学における榮養教育内容について
岩田 昌一
1
1厚生省
pp.7-10
発行日 1953年10月15日
Published Date 1953/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201269
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まえがき
戦後公衆衞生はすばらしい発展を示しきたり,治療医学から予防医学,予防医学から保健医学へと,理論とその実際が,劃期的に進展しきたつたが,近時栄養問題はこれら公衆衞生の分野の中重要な地位を占めるに至つた。
既にWHOはその決議項目の題目の1つとして栄養を取りあげ,又FAOは各国民の栄養水準の向上を目ざして,食糧問題の解決をはかろうとしている。即ち世界人類の福祉をはかるには,食糧問題の解決が何にましても先決事であると信ぜられている。それにも拘わらず今なお世界各国民殊に米食民族といわれる東洋民族の中に,著しい食糧不足及び栄養飢餓が存することは誠に遺憾である。然も世界人口の著しい増加は,いよいよ食糧栄養問題の重大性を加重している。かかる事柄は,対岸の火災ではなくて,食糧不足に悩み莫大な食糧輸入をしている我が国にとつても,足下緊急の問題であらねばならない。一般に生活水準の低い東洋民族は,健康及び肉体上の点においても,国際的にはほとんど問題にされない程低い位置にある。東洋から20数カ国参加したオリンピツク大会の成績は,東洋の星であつた日本をはじめとして見事に惨敗に終つた。この原因については,米食より来る欠陥即ち健康及び体力の根本的要素である栄養の低劣が,その決定的支配をなしたものと考えられる。ここに東洋民族の被搾取,被圧迫,どれい的,植民地的性格の因果関係を考えざるを得ない。
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