特集 公衆衞生からみた癌問題
日本における癌死亡の統計的觀察
瀨木 三雄
1
,
福島 一郞
1
,
三神 彦芳
1
,
藤咲 暹
1
,
栗原 登
1
1東北大学医学部公衆衞生学教室
pp.32-64
発行日 1953年6月15日
Published Date 1953/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201221
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はしがき
近代公衆衞生の歴史を概観すれば,欧米諸国においても我国においても,まずコレラ・腸チフス・ペスト・痘瘡その他の急性伝染病に対する対策,或は産業の近代化に伴う人口の都市集中の結果もたらされる非衞生的な都市の生活環境に対するいわゆる環境衞生改善対策や産業衞生対策に始まつていて,医療及び公衆衞生の水準が年年向上するにつれて急性伝染病はもとより,結核・癩・トラコーマ等の慢性伝染病も次々と防圧されて来たのである。
その結果は,極端な表現を敢えて用いるなら,「公衆衞生対策の重点が人生の出発点の時期である乳幼児対策と終末の時期である老令期の疾病に対する対策とにおかれるようになつて来た」と云うことができるであろう。勿論従来からの急性伝染病・結核・性病等の対策や産業衞生,一般環境衞生の対策,栄養問題等の重要性は今後も強調されなければならないが筆者等がここに取り上げたいと考えるのは従来比較的閑却視されていた老人性疾患に関する問題である。本稿はそのうちの「癌」について統計資料に基く論述を試み,従来の病理学的或は臨床的知見の他に公衆衞生的観点から検討を加える一つの足場を提供したいと考えてとりまとめてみたものである。
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