特集 公衆衞生からみた癌問題
米国における癌問題
平山 雄
1
1国立公衆衞生院疫学部
pp.23-31
発行日 1953年6月15日
Published Date 1953/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201220
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1.緒言
現在,癌問題は,米国においては,最も重大な課題の一つになつている。米国の公衆衞生活動がこの癌問題をめぐつてその研究に,予防の実際にきわめて活溌な動きを示している事は,われわれにとつても大いに参考になる事である。従来,ややもすれば,日本では急性,慢性伝染病が尚相当の流行を示しているので,癌問題を公衆衞生の課題として本格的に取りあげるのは,時期尚早という意見に流され易かつたのであるが,最近に至つて,漸く機運熟したのか,研究,行政の各方面にこの癌問題に関する関心が力強く湧きつつあることは,喜ばしい事である。急性伝染病も赤痢を除いては,実際問題として昔日の流行の面影はない。その赤痢とても,最早峠を越したと見られている。わが国の国民病と迄いわれていた結核も,曾田医務局長の言を借りれば,「落日の勢」で死亡率の低下を示しつつある。尚患者数は多く,問題は多々残つていようが,何れにせよ,本年度の結核は死因順位第3位を占めると予想される現状である。これらの諸事実より見て,われわれは,日本においても,公衆衞生活動の新しい焦点として,癌問題を取りあげる事は,決して先走った試みではないと考えるのである。
公衆衞生の立場からは癌問題をどのように取りあげて行つたらよいであろうか。癌の疫学的研究そして癌の予防活動と,その何れについても,全くわれわれにとつて新しい分野なだけに,先進諸国の足跡を一応学んで見ねばならない。
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