論説
獨立後の公衆衞生
舘林 宣夫
pp.2
発行日 1952年12月15日
Published Date 1952/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201136
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最近數年の間に日本人の平均壽命は約10年延長した。即ち久しく50歳附近に低迷していたものが,男女共に60歳を突破するに至つたのである。斯くの如き短期間に急速の進歩があつたことは公衆衞生史上稀な事實とされよう。その因つて來る原因については未だ充分には分析されて居らぬようであるが,サルフア劑その他の合成藥,各種抗生物質等劃期的新治療藥の出現により,病原體に起因する疾病の治療法が格段の進歩を遂げたことに依る點が最も關係が高く評價されよう。死因の要目をなしていた肺炎の死亡率は急激に減少し,又嘗つては患者の3分の1が死亡した發しんチフスは.現在では1名の死者も生じない。他面これ等の藥品が手術後に使用され,その豫後に好結果をもたらしている點も見逃し難い。新藥品の出現以外にも,結核の外科的療法に見られる如く,治療方法の進歩に依る點も相當にあるに違いない。
他面,出生の減少が乳兒層人口の低下を來し,この事が算術計算的に乳兒死亡の減少をもたらしたことも死亡減少 平均壽命延長の一因をなしたことも認められよう。然し乍ら一般公衆衞生の改善も,平均壽命の延長に影響を及ぼしていることは何人も認めるところであろう。赤痢を除く各種傳染病の激減,保建所の活動による母子衞生,結核豫防その他各般の分野に於ける改善向上が死亡の減少を招來したことは明白である。
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