疫學總論・6
第6講 流行の樣式
野邊地 慶三
pp.393-396
発行日 1951年6月15日
Published Date 1951/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200865
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I.生物學的現象
1 年齡關係
(1)年齢別罹患率,死亡率及び致命率
表8はヂフテリヤの年齡別の罹患率,死亡率及び致命率の對比表であるが,この3率はそれぞれ満2才,1才,および0才年齡階級においてその最頻値を示しておる。ハシカの3率の年齡分布もこれと全く同樣であるが,その他の小兒傳染病も大體同じ様な傾向を示すものである。このやうに小兒傳染病では患者は低年齡階級に集積するので,述者が全國の百日咳喉,ハシカ,ヂフテリヤおよび猖紅熱の4病の満5才未満の死亡者が各病の全死亡數数に對する割合を算出して見たところ,表9の如くであつた。即ちもしこれ等の4病の患者發生を致命率の低い満5才以後に後退させ得るならば,百日咳およびハシカではその犠牲の大部分を,ヂフテリヤでは3/4を,また猖紅熱では1/3を救うことができるわけである。それ故に小兒傳染病對策の1はその罹患年齢を抵抗力の大きい高年齡階級に後退させることにあるのである。
赤痢の3率も大體ヂフテリヤと同樣であるが,たゞ老年期に入つて再び死亡率と致命率が上昇する差がある。腸チフスは20才前後に罹患率も死亡率も最高となる。結核死亡曲線には5才未満と20才前後と2つの山があるが,第1峰は家族内感染によるものであり,第2峰は義務教育を終り社會に出て,初感染を受けて發病するだめに起る山である。
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