医学の話題
成長の樣相
杉 靖三郞
1
1東京教育大学
pp.24-26
発行日 1955年1月1日
Published Date 1955/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200770
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生きものは,虫でも魚でも,人間でもみなはじめは1つの細胞であるが,これが分裂,増殖をくりかえして成長してゆくのです.この細胞の成長は,物質の代謝によつておこるもので,生命のない物質たとえば,雪玉が大きくなつたり,結晶が大きくなつてゆくのとは,根本的にちがうことは御存知のとおりです.つまり無生物の成長は,外からの"附け加え"によつておこるのですが,生物の成長は,外界から物質を選択してとりこみ,それを一度碎いてから,生活に必要な物質としてふたたび合成するのです.
細胞は,外から物質をとりこんで増大するが,一定の大いきになると増大は止んで,こんどは分裂するのです.それは,細胞が外から物質をとりこむためにも間でできた不要物を外へ出すにも,表面が大きくなければならないのですが,ある一定以上の大いさになると,表面の広さが間に合わなくなるので,分裂によつて表面を大きくするのです.
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