講座
無痛分娩はこの樣にして行われている
尾島 信夫
1
1慶應大學
pp.10-12
発行日 1952年5月1日
Published Date 1952/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200097
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
産科手術(たとえば帝王切開術)を行う時に用いる麻醉は「無痛分娩法」とは呼ばれない。普通の分娩にあたつての痛みを緩解する方法をいう。尤も米國の一部の樣に,大部分が鉗子分娩として處理される樣な所では,産科手術麻醉と無痛分娩法との區別は明かでなくなる。分娩時の疼痛を陣痛と呼ぶ人が多いが,陣痛には子宮の收縮をも含めた意味があるので,産痛と呼ぶことにしたい。産痛を解消する程度にも色々あつて,全く胎兒の娩出を感じない程強く麻醉する方法もあるし,産痛の一部或は大部分を除く位で,娩出そのものは産婦が種々な程度に意識し得る程度のものも多い。從つて無痛分娩と呼ぶよりは産痛緩解法あるいは和痛分娩と名づけた方がよさそうである。
産痛が子宮收縮や腹壓等の「娩出力」と不可分のものならば,自然分娩を期待する限り産痛を解消させようとするのは不合理なことである。併し幸にして産痛はおそらく娩出力の結果によるものであつて,産痛が娩出力の原動力ではないから,合理的な方法を用いれば娩出力を妨げないで産痛を輕くし得る見込みはある。
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.