公衆衞生學教室めぐり・4
—靑葉球下に新設された—東北大學醫學部公衆衞生學教室
pp.183-184
発行日 1951年3月15日
Published Date 1951/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200808
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東北の首都仙臺の驛に下りると凡そ前世紀の遺物と見まがうばかりの古ぼけた市電が動いている。その市電にゆられて約15分,北四番丁の一角に東北大學醫學部がある。病院と基礎教室の間の通用門をくぐつてつき當りの小高い丘の上に赤瓦の瀟洒な1階建ての建物に「公衆衞生學教室」の看板がかかつている。當今の世の中では新設の講座に與えられたうぶ衣にしては誠に贅澤な位のもの。
從來工學部や農學部では教授級の人事に關して民間會社や官應と大學との交流は珍らしい事ではなかつたようだが,こと,醫學部に關しては殆ど異例的なことといわねばなるまい。ここの公衆衞生學教室主任教授となつた瀨木三雄博士はその異例的存在の1人である。尤も瀨木教授の云われるには醫學が現實を無視して超越した理論構成のみをもつて許されるならともかく,現實の場に立脚して人間の幸福を求めるための科學であるならば,殊に公衆衞生學のような人間社會の健康と能率の増進を直接對象とするような畑なら,學内學外の人事交流を異例とする觀念こそ是正さるべきだとのお説であるが,久しく象牙の塔として存こしていた大學がようやく批判されつつある現在誠に尤もな事と云わねばなるまい。
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