時評
何かゞ拔けている?
I
pp.137
発行日 1950年10月15日
Published Date 1950/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200718
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明年は日本の結核豫防事業史上,劃期的な年になりそうである。優曇華の花咲く年と言つては過言かも知れないが,結核關係者にとつては積年の希望が漸く實現の一歩をふみ出す年であろう。4ヶ年計畫で病床の倍加が實現しそうで,さしあたり來年度は2萬1千床を15億圓で増設する。國民の三割に對して,一部國庫負擔による健診を行うため2億圓が用意されている。30歳までのツ反應陰性者その他に對し國費及地方費によるB・C・G接種が行われる。結核の治療費の二分の一を國庫及び地方費で負擔するために9億圓が用意される。という風に總額87億圓,昨年度に比し,實に35億増という巨費が承認された。今後各方面との接衝の末,確定するわけではあるが,今回の豫算内定をみても,官民とも容易ならざる決意を以て,結核對策に乘り出したことが察せられるのである。二旬に亘り晝夜を舍かない奮闘をつづけた厚生省内外の關係者,ことに主務當局である公衆衞生局及び醫務局の關係者の努力と熱意に對し,又その説明によく耳を傾けて,結核對策の緊急性を容認した財政當局者の明敏と英斷に對し深い感謝と敬意を拂わずにおれないのである。
しかしながら一方に於て,我々はたとえ望蜀のそしりは受けようとも,本對策について畫龍點睛を缺いてはいないだろうかという疑問を敢て提出しようとするのである。それは我國の醫療體系の問題である。結核豫防事業の第一線機關として,保健所7百が見事に整備されつゝあることは實に慶ばしい。
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