論説
氣管套管拔去困難症治療に於ける1方法
北川 信太郞
1
,
岡 文夫
1
1前橋醫科大學耳鼻咽喉科教室
pp.169-171
発行日 1948年8月1日
Published Date 1948/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200086
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緒言
氣管套管拔去困難症に關する文献は甚だ多い。茲に本題に關係多い部分を拔萃し、次で症例の經過を述べ、前者を參考として考案してゆき度いと思ふ。先づ定義として認められてゐる處は「原病治癒せるに拘らず後遺症又は氣管切開後生じたる狹窄の爲套管を去れば呼吸困難を訴え再び挿入を餘義無くせられるもの」或は故久保教授の狹義の定義によれば「原病終息せざるもの又は續發症ありと思はるるものを含まず何等氣管狹窄の原因なくして醫師が拔去を躊躇し又は患者の恐怖し拔去を怯えるもの」とせられてゐる。前者は器質的後者は機能的のものであるが呼吸困難の程度と言ひ何れも相對的であり相當に主觀の混ずるのを免れ得ない。之が分類は主としてBrüggemannによれば(1)肉芽性(2)瘢痕性(3)氣管壁彎曲性(4)慢性粘膜腫脹(5)氣管前壁弛緩(6)外部よりの氣管壓迫(7)聲門開放筋の麻痺(8)精神的影響(9)聲門痙攣(10)氣管枝異物(11)創面の殘存縫合絲化膿等が擧げられ、Thostによればそのうち最も屡々遭遇するものは(3)(1)(2)(9)とせられている。所謂原因も亦多樣であつて(1)Carrieは手術の種類其者を重視し下氣管切開を最良とす。切開線が正中線を離れ又は過大或は過小に過ぎる場合(2)套管の不必要なる長期間挿入(3)不注意なる後療法(4)粘液分泌過多(5)肺炎等の併發(6)套管の種類、大さ、形、彎曲軸の向き等適合性の如何。
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