綜説
日本腦炎病毒の同定に就て
安東 淸
1
1豫防衙生研究所
pp.189-196
発行日 1949年2月25日
Published Date 1949/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200421
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私は此處に,所謂濾過性病原體のうちの日本腦炎病毒の同定と云う比較的狭い範圍の事柄について,實際我々が日常研究室で行つて居る方法並に考え方に就て具體的に解説して見たいと考える。從つてこの日本腦炎病毒が新しい意味でのウイールスの範疇に這入るものであることは當然の事として直ちに同定についての解説を進めたい。
1)病毒の出所及系統 如何なる材料からその病毒が分離されたかと云う事は一應病毒の同定に對しての一つの手懸りを與える。例を擧げて説明すれば,今我々が臨床的に日本腦炎と診断され死亡した患者材料,即ち腦,脊髄液,血液等を材料として型の如くこれを廿日鼠腦内に接種して一定期間の後に一つの病毒を分離し得たとすれば,先ずこの病毒は日本脳炎病毒を第一に疑う可きではあるが,日本腦炎患者材料から分離されたもの必しも日本腦炎病毒であるとは限らない。こゝに以下述べる樣な嚴密な同定に對する手續を踏む必要が生じてくるのである。ましてその病毒が一見日本腦炎患者と何等關係のない材料から得られた場合には前の場合に比して一層嚴重な批判に堪える丈の根據を必要とする事は勿論である。
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