論述
結核の家族感染に就て
前田 鍵次
1
1高山日赤内科
pp.145-151
発行日 1947年8月25日
Published Date 1947/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200170
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臨牀家が結核感染の樣相を實際に就て觀る場合,一面急性傳染病を想はす様な蔓延状態があると共に,他面恰も非傳染性疾患の樣な外觀が認められる場合もあることは,少しく此點に注意する時經驗される處である。一般に病源體が體内に侵入し感染發病を來すには,病源體を提供する感染源之を媒介傳搬する感染徑路,及びその侵入で發病する様な感受性ある個體,この三者が必須の要素で其の何れを缺くも感染は起らぬ。從つて結核感染に關し明確な概念を得るには個々例に就き3要約各々の諸條件を明かにする事が必要となる。結核感染を臨牀家として考究するに最好適な材料をとりうるは家族内感染で,此の際の經驗が一般的に室内感染の他の場合を察する基本となり得やう。下述調査の材料は余が概ね名古屋市牧野保健所にて,西區と中村區の概ね中流以下家庭につき昭和15年春より19年秋迄に得た所に係る。
結核の家族感染率が如何に高いかは先人の反覆指摘せる處で,特にその乳幼兒への影響は極めて深甚なものがある。余の經驗によれば結核負因ある乳幼兒313名の「ツ」陽性率は55.9%,發病率は26.8%で,負因き789名(外來)の名々10.0%,4.2%に比し5-6倍の高きに達してゐる。乳兒335中「ツ」陽性は26名で其中22名に負因を認めた。負因を有する4-7歳151名の「ツ」陽性率66.2%,發病卒29.1%は,中村區の3幼稚園兒810名の夫々14.1,1.1なるに比し著しい相違を示してゐる。
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