論述
食品衞生
川崎 近太郞
1
1公衆衞生院生活科學部
pp.439-447
発行日 1947年4月25日
Published Date 1947/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200133
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1.食品衞生の意義
終戰後,食中毒の頻發によつて食品衞生の問題が注目されて來た。食品衞生の實際面として食中毒の原因を調べその豫防對策を講ずることが考へられるが食中毒の防止のみが食品衞生ではない。食品の純正さを保ち榮養價を低下せしめないこと,或は榮養效率を向上せしめることも榮養的の方面も全て食品衞生に含まれる。食品の純度を確保するには各食品の定義を明かにして食品規格を明示し,品質を低下せしめるやうな他物の混入即ち『僞和』や他物との混同即ち『僞稱』を禁止せねばならぬ。
食品が細菌性の原因によつて變質したり,或は化學的の原因によつて汚染されたり,有害物質が夾雜したりした場合には食品の品質を低下させるだけでなく食中毒の誘因となる。從つてこのやうな汚染は食品衞生上嚴重に注意されねばならぬ。之に反し『僞和』及び『僞稱』の場合には有害物を含んでゐない限り食中毒等の危害を起す虞れはない。吾國に於いては『僞和』並に『僞稱』は比較的輕く見られ,商業上の詐欺行爲でない限り殆ど問題にしてゐない。食品の規格と云つても經濟統制の一翼として價格決定の補助手段であつて食品衞生といふ觀點からの規格ではないのである。從つて法規上ではマルガリンの標示をなし清涼飮料水の人工著色には人工著色料含有を明記せしめるやうな點で『僞和僞稱』を取締り,又た牛乳及乳製品に一定以上の規格を規定した點に於いてのみ僅かに食品の品質保持に關する注的取締が行はれてゐる。
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