--------------------
公衆衞生に必要な歯科衞生知識
大西 栄藏
1
1厚生省医務局歯科衛生課
pp.37-46
発行日 1955年6月15日
Published Date 1955/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201569
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
明治の初年から歯科医学は近代医学の中で特異な発達をして来た。明治8年に公布せられた医制においては,歯科は口中科として規定せられ一般医学の一分科として取扱つていたが,その後明治16年に公布せられた医師試験規則では医師試験の外に歯科医師試験の規定が設けられ,これが現代の歯科医師制度の発端となり,明治39年医師法,歯科医師法が兩立して制定せらるるに及び医療は医師の行う医業と歯科医師の行う歯科医業とに分れて,全く別個の歩みを続けて来たのである。その為歯科医学の発達も,一応一般医学とは別個な環境と人人とにより研究せられ,向上したのであるが,兩者共に長足な進歩を遂げた今日,なお医学と歯科医学とは現実的に別個な物として一般社会に取扱かわれているのである。元より歯科医学は一般医学と全く異る特殊性が存在することは確であるが,その根拠とするところは医学の範疇を出ずるものではない。衞生学と歯科衞生学との関係も全く同様である。従つてこれが公衆衞生の一般社会に応用される場合においても,一般衛生と歯科衛生は分離した形で別々に取扱かわれている場合が多いのである。このことは公衆衞生が国民生活の上に益々重大な意義と効果をもたらし,国の重要施策として採り挙げられている今日,我が国公衆衞生の発展のうえから好ましいことでは無い。これが亦歯科衞生の発展を阻害している一つの原因でもあろうかとも考えるのである。
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.