特集 食中毒
食品衞生におけるコナダニ類の問題
佐々 学
1
1東京大学附属傳染病研究所
pp.49-52
発行日 1954年9月15日
Published Date 1954/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201460
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I.まえがき
コナダニ類とよばれる1群のダニ類はおそらく遠い昔から人類の食品に発生して色々な形で害を及ぼしていたにちがいないが,少くも我国で食品衛生上の重要な問題として認識され始めたのはようやく近年のことである。しかし古く三宅Scria(1893)が喰腎血蝨Neprophages sanguinariusと名づけて人の尿中から発見したダニ,或はその後の数多くの類似の症例に見られたダニ類が現在の知識から再検討したとき殆どすべて食品などに発生するコナダニ類やホコリダニ類であることを考え合わせると,実は我国でも古くから医学上の問題として注目されていたことになる。
私は数年前から色々な症例の尿,喀痰,糞便,腹水などに臨床医家の方々が検出されたダニ類を検索する必要に迫られ,他面食品衛生や環境衛生の問題として色んな我々に身近い材料に発生したダニを調査する機会があってこの分野の研究をやや本格的にとりあげて来た。そして私共の知見がひろまるにつれて,これらの微小なダニ類がひき起す衛生上や経済上の被害が意外にも大きなものであり,また自然界にこの微生物がいかに広汎に,しかもおびただしく繁殖しているものであるかについて驚きを感じている。もちろん我々がこれから解決しなければならない,或は調査の手をひろげなければならない多くの分野が残されているが,ここにこれまでの知見のあらましを述べて御参考に供したいと考えた。
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