論説
健康教育か衞生教育か
齋藤 潔
pp.435
発行日 1947年4月25日
Published Date 1947/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200131
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一般公衆に對し,生活の衞生的規制を教へ個人の心身の健康を増進し,更に公衆衞生に及び,以て健康なる社會生活を築き上げようとすることを普通の意味で健康教育又は衞生教育といふ。わが國に於て使用されてゐるこの兩語が,同意義か否かも明かではないが,明瞭を缺いてゐることは事實である。元來この語は英語のHealth Educationからきてゐる。Healthが健康か衞生かといふことを詮議立てする人もあるが,熟語を分析してみてもどうにもならない。英語で學校衞生をSchool HealthともSchoolHygieneともいふ。またアメリカでも,廣義にはHealth Educationが三通りに解せられることがあると,その道の權威者であるターナー博士もその著書にいうてゐる。即ち(1)民衆への衞生教育,(2)衞生專門技術者の養成,(3)學校衞生教育,といふのがそれである。日本語で健康教育といへば,その響きは個人を對象とする日常の健康生活の習慣を養成する個人衞生の教育であり,衞生教育といへば個人衞生ばかりではなくて,公衆衞生の教育も含まれるであらう。また,衞生教育は醫學校に於ける衞生學の教育も,衞生技術者の養成といふ意味も含まれそうである。昭和21年米國教育使節團の視察報告書の文部省發行の飜譯書にはHealth Educationを健康教育としてゐる。衞生教育ではない。
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