論説
食の問題
齋藤 潔
pp.340
発行日 1947年3月25日
Published Date 1947/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200110
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民生の安全は先づ食糧の確保から始まり,世界平和の保障もまた食の問題の解決にあることはいふまでもない。新日本建設の第一段階として,食糧政策が緊急且つ重要問題であることは,吾等の日常痛感してゐる所である。狭い國土に8000萬の民族が住んで,海外との貿易が限られ,移出民も不可能となる運命である。未墾地の開拓が行はれるとしても,大體主食2000萬石は年々海外らの輸入を俟たねばならない。今後海外からの輸入は,みかへり物質とのにらみ合はせできるまでであろうが,どの道輸入總額に對して食糧費の占める部分は大きいものであろうから,この輸入物質としての主食の額を出來るだけ少くすることが必要である。そのためには國内の食糧増産が考へられる。未墾地の開拓と農業技術の向上に依る農産物の増産,水産物の増産,蓄産の奬勵等が計畫され,一部は既に始つてゐるが,ここに一つ見のがされてゐるものがある。食糧は單に増産されただけでは,未だ食の問題の解決に十分益する所が少い。増産された食糧の地域的配分が合理的に行はれねばならない。
從來自由經濟に於ても農産物は農村にあり餘り,農村は農産物のみに依つて榮養を維持しようとしてゐた。米のみから蛋白質を攝るとすれば,農民は1人1日1キログラム以上の米を消費することとなる。今後はかかる農村の非科學的米の浪費は許さるべきでない。宜しく水産物の加工事業を増進して,都市と農村との蛋白質の榮養學的配分を適正ならしむべきである。
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