シンポジウム 第17期日本学術会議環境保健学研連主催公開シンポジウム
都市医学のストラテジー・3
環境化学物質によるがん発生に対する予防方策—環境発がん物質には作用しない量がある
福島 昭治
1
1大阪市立大学大学院医学研究科都市環境病理学講座
pp.841-844
発行日 2000年11月15日
Published Date 2000/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902408
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われわれの環境中には多数の化学物質が存在しており,それらが社会生活をこの上なく豊かにしてきたことは大きな事実である.一方,それが人々の健康に障害になっていることも事実である.話題を発がん物質に限ってみても,イギリスの疫学者であるDoll博士はヒトがんの発生原因の約80%は環境中に存在する発がん物質に帰すると述べている.したがって,空気,食物,飲料水,煙草などの嗜好品,医薬品,農薬などに存在する発がん物質がヒトのがん発生に実際に重大な影響を及ぼすのか,またそうだとすればそれはどの程度なのか,などの問題は医学的にも,さらに,社会的にも極めて重要な課題である.しかし現在の段階では,個々の発がん物質ががんの発生にどの程度関与しているか否かは定かではない.われわれは化学物質のもつ恩恵とリスクの挾間で,確固たる科学的根拠をもって発がん物質に対するリスクを説明しうる情報を持ち合わせていないのが現状である.しかも発がん物質には人工のみならず天然のものがある.したがって,われわれは発がん物質と共存しなければならないという大前提がある.
そこで,環境発がん物質のリスクに対する科学的根拠とがんの予防に焦点をあわせたわれわれの最近の基礎的データを報告する.
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