特集 臨床検査の新しい展開―環境保全への挑戦
Ⅱ.環境問題と疾病
5.水環境の汚染と疾病
1)水環境と汚染物質
細田 茂雄
1
,
広瀬 義文
2
Shigeo HOSODA
1
,
Yoshifumi HIROSE
2
1埼玉県埼葛南福祉保健総合センター春日部保健所感染症等検査
2埼玉県衛生研究所化学部
pp.1331-1336
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904227
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はじめに
「春の小川はさらさら行くよ,岸のスミレや………」と歌われた風景は,わが国ではあまり見られなくなった.そのような自然の消失は今日の経済的繁栄と無関係ではない.昭和30年代から40年代末にかけて,わが国では高度経済成長を目指し,生産活動の拡大ならびにそれに伴う都市部への人口の集中が起こった.その結果,産業排水や生活排水が河川,湖沼,海域,地下水などの水環境を悪化させ,水俣病やイタイイタイ病などの公害病を引き起こしたことはよく知られている.そのため,国民の健康の保護と生活環境の保全とを目的として,1967年に公害対策基本法が制定され,1993年にその法律は環境基本法に改定された.このなかには水質汚濁を規制する環境基準が示されている.環境基準は人の健康の保護に関する項目と生活環境の保全に関する項目とから成っている.
一方,水環境に由来した細菌汚染としては,井戸水を飲んだ幼稚園児が病原性大腸菌0-157により死亡した例や,井戸水による赤痢の集団発生例などがある.
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