特集 スクリーニング―その進化と課題
尿マーカーによる骨粗鬆症検診の課題と展望
新飯田 俊平
1
1(独)国立長寿医療研究センター遺伝子蛋白質解析室
pp.866-870
発行日 2012年11月15日
Published Date 2012/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102579
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はじめに
「この10年,毎年検診を受けて問題ないと言われてきましたが,尿マーカーの検査で要精査となり,病院で骨粗鬆症を見つけてもらい,治療を開始することになりました」.
尿マーカーによる骨粗鬆症のスクリーニング調査を実施してから,しばしばこういう手紙や電話がくる.通常骨粗鬆症の行政検診では,前腕の骨か踵の骨密度を測定する.その感度は非常によいということになっている1).この場合の感度とは,骨粗鬆症の診断基準となる腰椎または大腿骨の骨密度を反映するという意味である.ところが今回の調査から,骨密度測定はかなりの有病者を見逃していることがわかった.だから冒頭のような手紙や電話がくる.感度のよい検査法は見逃しが少ないということになっている.骨密度測定法の感度がよいというのがそもそも間違いなのか,使用した測定機器に問題があったのか,それはわからない.
骨代謝マーカーはスクリーニングには不向きである2).そういう意見がある.通常骨代謝マーカーは治療のモニターなど,臨床上の使用が主で3),行政検診ではほとんど利用されていない.ところが,実際に検診で使ってみたら,骨密度測定のときより二次検診後の有病者スクリーニング数が多かった.この傾向は3年の調査期間を通して変わらなかった.一次スクリーニングが有病者を見逃していては検診の意味がない.それなら尿マーカーを検診で使ってみてもいいのではないか.個人的にはそう思っている.尿マーカーの検診への適応性の議論は専門家に任せるとして,本稿では,今回の調査で見えてきた課題について考えてみた.
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