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はじめに
2025年,つまりあと13年すると,団塊の世代全員が75歳以上となり,わが国が経験したことのない超高齢社会になる.わが国では65歳以上の人口における認知症者数はおよそ250万人と推定されていたが,最近の65歳以上の高齢者を対象とした疫学調査結果では,従来よりも高い認知症の有病率が示され,その前駆段階と考えられる軽度認知障害者を含めると,その数は数百万人とも考えられるが,適切な診断・治療を受けることができている割合はきわめて少数と予測される.認知症であっても早期診断が好ましいことは言うまでもない.しかし,一部の専門的な医療機関を除き,特に軽度認知症が見逃されている可能性が大きい.
わが国では,かかりつけ医の認知症診断を検討した報告は筆者の知る限りないが,Bradfordら1)はプライマリーケアの現場における認知症診断を検討した40の原著をレビューし,特に軽度認知症が見逃されやすいことを指摘している.関連する要因として,医師,介護者ともに認知症に関する知識・認識の不足を挙げている.まさにわが国もそのまま当てはまる.また,Iracleousら2)はカナダ家庭医学会の17,000人の会員から一定の条件で無作為に抽出された500人を対象に郵送調査を行い,249人の回答を得,89%の回答者が家庭医による認知機能障害のスクリーニングには賛成していることを報告している.わが国では同様な結果はないが,認知症疾患の中でもっとも多い原因であるアルツハイマー病(Alzheimer's Disease:以下AD)のマネジメントでは,早期発見・診断,適切な抗認知症薬による治療およびケアがもっとも重要であることは明らかであり,早期発見のためには,軽度認知症を含めた認知機能障害のスクリーニングが有用である.
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