今月の主題 腫瘍マーカー
総説
腫瘍マーカーの展望
服部 信
1
Makoto HATTORI
1
1金沢大学第1内科
pp.1039-1045
発行日 1984年9月15日
Published Date 1984/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912292
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腫瘍マーカー研究の過去の歴史
1845年11月1日,Watsonから一通の手紙が,Henry Bence Jonesに送られてきた.その手紙に一本の試験管が添付されていて,厚い,黄色い,半固形の物質が,試験管に入っていた.手紙には,"この試験管には,非常に比重の高い尿が入っている.この尿は煮沸すれば,非常に濁り,硝酸を加えると,泡立ち,赤色を呈し,透明となり,冷却すると,ごらんの硬度と外観の物質になります.熱すると再び液状になります.これはいったい何でしょうか"と記されてあった.この尿中の物質こそ,今日私どもが,Bence Jones蛋白質と呼ぶものであり,1848年彼1)は,Philosophical Trans-actions-Royal Society Londonに,On a newsubstance occurring in the Urine of a patientwith Mollitium Ossiumと題して発表した.この文献には一つの引用文献も無く,この尿成分の元素分析成績が載っているのみである.この論文こそ,腫瘍マーカー研究の黎明を告げたのである.その後,長い間あまりヒットは出ず,近年に到り,開花を新たにしたのである.
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