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はじめに
私は1999年1月から千葉県松戸市で開業している内科医である.当院は,月平均2,000人の外来患者さんと常時40人以上の在宅患者さんを管理,在宅看取り数は年間6~14人の(ひとり)在宅療養支援診療所である.当院を受診される患者さんには,まさに「かかりつけ医」として診療にあたり,皆さんが不幸にして病に倒れられた後も,看取る医療を行っている.
事例:患者さんは63歳男性.2005年5月に血圧が196/127に上昇,呂律障害が出現し,近所の病院を受診.頭部MRIで多発性脳梗塞と診断され服薬開始.07年2月に当院へ逆紹介された.奥さんを胃がんで亡くし,子どもはおらず,集合住宅で1人暮らしだった.以後,月1回の割りで安定して外来通院をされていた.しかし09年10月外来中に警察署から連絡があり,自宅で「孤独死」されているのが発見された.
開院以来約13年余り経つ.この13年間当院が何らかの形で関わった患者さんで,判明した死亡患者数は443人である.このうち「自宅死」が108人(うち在宅で看取った方は73人)いる.443人中,「突然死」は46人,「突然死かつ孤独死」は13人だった.「孤独死」では警察から問い合わせの電話が入り,知ることが多い.病院で管理中でも予期せぬ突然死がある.あえて言えば,どんなに努力し厳格で最善の臨床を行っても,突然死や孤独死は出現し得る.
在宅医療を行っていると,これらの亡くなった方々に「最後まで付き合う医療」を行うことになる.高齢者は亡くなるまでに多数の疾病や事故に遭遇する.「かかりつけ医」は文字通りその一つ一つに対応せざるを得ない.最近は医療現場の努力もあり,「一度の疾病で直ちに亡くなる方」は少ない.むしろ幾多の重病を乗り越えて長生きされる方が多い.治療のみならず介護への理解も必要である.したがって医療現場にはこれまでに未経験の負荷がかかっている.「介護力が全くない独居高齢者」では,さらに対応・対処が困難で難渋する.
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