特集 アルコール関連問題
大災害とアルコール関連問題
野田 哲朗
1
1大阪府立精神医療センター高度ケア科
pp.210-214
発行日 2012年3月15日
Published Date 2012/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102364
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
1995年1月17日発生の阪神・淡路大震災では,それまで日本では関心が持たれることのなかったPTSD(Post traumatic stress disorder)が注目され,こころのケアと称して初めて大々的に被災者のメンタルヘルスケアが行われた.生命の危険に関わるような破局的な体験(トラウマ体験)が原因となって発症するPTSDは,災害が新たに引き起こす精神疾患として理解しやすく,様々な団体によって被災者のメンタルヘルスケアが行われたのであった.
だが,震災当初のメンタルヘルスの課題は,統合失調症などの治療中断患者への医療継続や,避難所に支援物資として流入した酒類が顕在化させた飲酒問題への対応であった.
平時,アルコール関連問題は,アルコール使用障害(乱用・依存症),アルコール関連身体疾患,自殺,飲酒運転,虐待,DV(ドメスティック・バイオレンス),犯罪など多岐に亘り,深刻な問題でありながら看過されがちだが,震災後のストレス状況が続く被災地では,平時以上に対応しにくい問題となる.
本稿では,災害時のアルコール関連問題と,その対策について論じる.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.