"なぜ診断できないか"を科学する・9
アルコール関連問題に強くなれ
江村 正
1
1佐賀医科大学総合診療部
pp.873
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903625
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アルコール多飲の患者は,医者泣かせである.とくに救急の場合は,本人から適切な病歴が取れない.診察に協力的でない・家族と連絡がつかないなど,非常に厄介である.したがって,情報不足により,病態の診断・把握が困難であることが少なくない.しかし,アルコール多飲と関連する疾病や病態を知っておくと,難解にみえる症例の解決の糸口がつかめることがある.
アルコールと聞けば,肝障害が一般に広く知られているが,アルコールの影響は全身に及ぶ.神経系(Wernicke脳症,Korsakoff症候群,アルコール性小脳変性症,アルコール性ニューロパチー),消化器系(Mallory-Weiss症候群,食道静脈瘤,急性胃炎,胃潰瘍,下痢,慢性膵炎,肝硬変),心血管系(アルコール性心筋症,脚気心,高血圧),筋骨格系(横紋筋融解症,アルコール性ミオパチー,大腿骨頭壊死),その他,糖尿病,アルコール性ケトアシドーシス,振戦せん妄,アルコールてんかんなどがあげられる.検査所見では,赤血球の大球性化,血小板の減少,AST有意のtransaminase上昇,γGTPの上昇,HDL-Cの上昇などがある.易感染性で,重症肺炎・髄膜炎・敗血症など,致命的な感染症で運び込まれることも少なくない.その際,血小板減少や凝固系異常が,重症感染症によるDICの症状か,合併する肝疾患によるものか,アルコール自体の影響によるのか,判断に苦しむこともある.
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