Japanese
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特集 アルコール・薬物関連障害
災害とアルコール問題―被災地における中長期的なメンタルヘルス問題
Alcohol Related Problems Following a Disaster: Intermediate and long term psychiatric problems of the Great 2011 Tōhoku Earthquake
野田 哲朗
1
Tetsuro NODA
1
1大阪府立精神医療センター
1Osaka Psychiatric Medical Center, Hirakata, Japan
キーワード:
Alcohol use disorder
,
Alcohol related problems
,
PTSD
,
post traumatic stress disorder
,
The Great 2011 Tōhoku Earthquake
,
The Great 1995 Hanshin Earthquake
Keyword:
Alcohol use disorder
,
Alcohol related problems
,
PTSD
,
post traumatic stress disorder
,
The Great 2011 Tōhoku Earthquake
,
The Great 1995 Hanshin Earthquake
pp.1079-1085
発行日 2012年11月15日
Published Date 2012/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102310
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はじめに
2011年3月11日,東日本沿岸部を主として襲った地震は,津波,火災により,あまりにも多くの死者と行方不明者を発生させてしまった。そして,世界を深閑とさせる福島第一原発事故は,今なお放射性物質を飛散させており,県内外を含め多くの福島県民が避難を余儀なくさせられている現実が,災害後(post disaster)という用語を使用しづらくしている。
我々は,1995年に未曾有の被害と形容された阪神・淡路大震災を経験しているが,遺憾ながら東日本大震災はその被害を凌駕し,被害の様相を大きく異るものとしてしまった(表)。心的トラウマからくるメンタルヘルスの悪化は疑いようがなく,コーピングとして,飲酒が用いられやすく3),今災害の被災地は,飲酒習慣の根付いた漁師町が多く含まれていることからもアルコール問題の重篤化が危惧されるところである。
震災当初,阪神・淡路大震災の経験が活かされ,避難所には支援物資にアルコール飲料が含まれず,また,流通もストップしたため禁酒による振戦せん妄などの離脱症状が認められたが,総じてアルコール問題の顕在化は少なかったようだ。しかし,仮設住宅に被災者が移り始めた5月,6月頃より,自由に飲酒ができるようになり,アルコール問題が顕在化し始めている。
震災から1年半を過ぎ,被災者の心理は幻滅期にあることは疑いようなく,中長期にわたるアルコール問題を含めた被災者のメンタルヘルスについて論じる。
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