特集 分子遺伝疫学
ライフスタイル医学と分子遺伝疫学
竹下 達也
1
1和歌山県立医科大学医学部公衆衛生学教室
pp.772-775
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101898
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生活習慣病発症にかかわる遺伝・環境要因
近年の分子生物学の学問および技術の発展を背景として,人間の形質あるいは健康度の遺伝的背景が急速に解き明かされようとしている.そこで問われるのは,それぞれの疾病発症にかかわる遺伝要因と,環境要因の相対的割合である.遺伝要因と環境要因の割合について強力なエビデンスを提供するのが,一卵性および二卵性双生児を比較する疫学研究である.欧米の知見ではあるが,循環器疾患,がんをはじめとする様々な疾患における遺伝・環境要因の割合は,おおむね図1に示すような結果を示唆している.単一遺伝病の場合には単一の,あるいはごく少数の主要な遺伝子が決定的に関与しているのに対して,事故や感染症にかかわる遺伝子を発見するのは困難である.生活習慣病の中では,大まかに言うと,糖尿病や循環器疾患においては遺伝・環境要因が相半ばするのに対して,がんの発症には,環境要因に比べて遺伝要因の関与は比較的小さいとされている.
そこで生活習慣病の発症要因を考える際には,遺伝要因と同等,あるいはそれ以上に大きな影響を与える環境要因(その大部分はライフスタイル要因)の関わりについて考察することが,研究および予防対策の重要な前提条件となる.
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