連載 地域保健従事者のための精神保健の基礎知識・6
自殺問題から明らかになる地域保健の課題・2
川野 健治
1
1国立精神・神経センター精神保健研究所精神保健計画部自殺予防総合対策センター
pp.509-512
発行日 2010年6月15日
Published Date 2010/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101828
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入口の支援だけではないということ
筆者は,幸いにして自殺予防に取り組むさまざまな立場の方とお話しさせていただく機会があり,それがとても勉強になる.その1つ,救命救急センターの医師からガッデム症候群についてお聞きしたのは,ずいぶん前のことのように思う.ご存知の方も多いと思うが,これは自殺未遂者・自傷行為を行う者に対し,救命救急センターで医療従事者が抱く陰性感情のことである.たとえば,救命救急センターの医師は,以前自分が救った過量服薬による自殺未遂の患者が,また同様に自分の前に搬送されてきたとき,生きたいのに生命の危機にある患者を救い続けている身として,思わず不愉快でいらだつ感情[これがgoddamn(ガッデム)と表現される]を抱いてしまうというのである.
自殺念慮を持つ人や,自殺未遂者・自傷を行う人に対して抱いてしまう陰性感情は,ガッデム症候群に限らず,さまざまな支援の場面で,もちろん地域保健においても形を変えて現れる.自殺は背景や関わる要因が多様な現象であるが,それらの条件を超えて,自殺予防という問題に共通する課題ではないだろうか.
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