連載 地域保健従事者のための精神保健の基礎知識・5
自殺問題から明らかになる地域保健の課題・1
松本 俊彦
1
1独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
pp.419-422
発行日 2010年5月15日
Published Date 2010/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101806
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地域保健の支援は総合的・包括的
筆者はここ数年,いくつかの保健所や精神保健福祉センターで定期的に開催される事例検討会に助言者として参加し続けており,毎回,「今日はどんな事例だろう?」と楽しみにしている.もっとも,そんな風に思えるようになったのは比較的最近のことだ.正直に告白すれば,精神科臨床医時代,保健所からそうした依頼があると,いささか煩わしく感じていた.なにしろ,当時は病院業務に追われたし,油断すると「地域の厄介者」のような患者の主治医に押しつけられるのではないかという不安もあった.
しかし,研究所に勤務するようになってから心境の変化が生じた.病院を離れて研究所生活を始めて数か月ほど経過したとき,「このままでは臨床センスは永遠に失われてしまう」と不安を感じるようになったのだ.「何もしないよりは,せめて事例検討会にでも参加すれば,多少とも臨床の緊張感に浴することができるかもしれない」.幸い,もともと自分がアルコール・薬物依存臨床という人材の乏しい領域を専門としてきたこともあって,事例検討会に声をかけてもらう機会は少なくなかった.
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