特集 がん予防
がんの2次予防に関するトピック
①前立腺がん検診の有効性に関する議論と今後の展望
岩室 紳也
1
1(社)地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター
pp.912-916
発行日 2009年12月15日
Published Date 2009/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101688
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はじめに
PSA(Prostate Specific Antigen)による前立腺がん検診(以下:PSA検診)について厚生労働省の研究班1)と日本泌尿器科学会2)の見解が異なること,ヨーロッパ(ERSPC3))と米国(PLCO4))の大規模臨床試験の結果が異なること,さらに日本泌尿器科学会が「今回ERSPCの研究で明らかな死亡率減少効果が出たことで,PSA検診は,利益と不利益に関する最新情報を受診希望者に提供することを前提に,より強く推奨されるがん検診となります」5)と言い切っているため,地域保健,公衆衛生の現場に混乱が生じている.
本稿では,日本泌尿器科学会認定指導医(認定番号92007324)であり,公衆衛生に長く関わってきた立場から,前立腺がんやPSAに関する既知のエビデンス,PSA検診や前立腺がん根治療法の実施状況,さらには泌尿器科医の思いを紹介しつつ,PSA検診の意義と課題について検証する.なお,ERSPCとPLCOの評価については,日本泌尿器科学会の「ERSPCの研究結果は科学的見地から優れており,世界の前立腺がん検診研究で最も重要なエビデンス」5)とする分析は的確と考え,ERSPCの結果を重視した.
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