特集 がん予防
肺がん予防に関する遺伝学的アプローチ
河野 隆志
1
,
横田 淳
1
1国立がんセンター研究所生物学部
pp.907-911
発行日 2009年12月15日
Published Date 2009/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101687
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肺がんは,胃がんに次いで罹患数第2位に位置する発症頻度の高いがんである.また,5年生存率が15~20%である難治がんであることから,死亡数では第1位を占めている(http://ganjoho.jp/public/statistics/pub/statistics01.html).肺がん死の減少のためには,肺がんの発生を抑える1次予防が重要である.喫煙は肺がん発生に関わる最大の環境要因であり,禁煙が1次予防の有力な手段であることは間違いない.しかしながら,近年,喫煙との関連が弱く,非喫煙者が患者数の半数を占める「腺がん」が全肺がんの約半数を占めており,禁煙以外の予防手段が求められている.また,他臓器やリンパ節に転移のない第I期の肺がんでは5年生存率は70~80%であり,特にCTの普及で検出頻度の高くなった小型肺腺がんでは90%以上であることから,肺がんは早期発見・治療によって十分治癒が望める疾病である.よって,早期発見・治療による2次予防は,1次予防と並び,肺がん死減少のための有力な手段となる.
肺発がんリスクを規定する遺伝子が明らかになれば,肺がん罹患への高危険度群を選別し,検診を行うことによる効率のよい2次予防が期待できる.また,そのような遺伝子の機能を解析することにより,1次予防の標的となりうる内的・外的の環境因子の同定にもつながると考えられる.
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