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あとがき
西田 茂樹
pp.708
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101640
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まだ20代の頃,よくアメリカの公衆衛生の雑誌を読んでいました.その時に驚いたのは,殺人事件が研究テーマとして取り上げられていたことでした.また,私が今までに読んだ論文の中で一番面白いと思ったのは,車のシートベルトの着用率を向上させることを目的として作成したテレビコマーシャルの効果を検証した内容の論文で,やはりアメリカの公衆衛生の雑誌に掲載されたものでした.これらの論文を通じて,殺人も交通事故も公衆衛生の対象だということを知りました.
さて,わが国では,外因死のうち,自殺と一部の不慮の事故は公衆衛生の対象として研究や施策立案がされますが,他殺や傷害,交通事故,災害などが公衆衛生の対象とされることは稀だと思われます.確かに殺人事件や傷害事件をわれわれが扱うのには無理があると考えられます.しかし,これらの事件に繋がる暴力や虐待といった行為は,家庭や施設,地域の中で起こっており,また被害者が高齢者や障害者,子どもや女性といった弱者であり,公衆衛生の対象者でもあることを考慮すると,われわれも暴力や虐待の問題に取り組む必要があるのではないかと考えます.そこで,まず,弱者への暴力について学ぶため,本特集を企画しました.
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