連載 働く人と健康―精神科臨床医の立場から・2
パワハラとメンタルヘルスの現状
天笠 崇
1,2
1メンタルクリニックみさと
2京都大学医学部大学院社会健康医学系専攻健康情報学
pp.129-132
発行日 2009年2月15日
Published Date 2009/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101500
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はじめに
1989年に新語部門金賞に「セクシャル・ハラスメント」が選ばれて以来2),セクシャル・ハラスメント(セクハラ)は,一時的な新語・流行語として消えることなくわが国にすっかり定着した.その後,アカハラ,アルハラ,ドクハラ,モラハラといったいくつもの態様の「ハラスメント(心理的暴力や嫌がらせ)」が指摘されるようになった.中でも,上司の部下に対するハラスメントの態様としてパワーハラスメント(パワハラ)という和製英語が,人口に膾炙し今日に至っている3~5).2006年2月,筆者らは,その著訳書6,7)によりわが国にハラスメントの概念を普及・定着させたフランス人精神科医イルゴイエンヌさんをお招きし,東京と大阪で国際シンポジウムを開催した8).会場は収容しきれないほどの参加者であふれ,いずれも大盛況であった.わが国の職場において,いかにハラスメントが喫緊の課題であるか再認識させられた.
本稿では,ハラスメントが原因と認定された労働関連自殺事例に触れ,わが国の職場にハラスメントが蔓延していることを示唆する調査結果を紹介する.また,ハラスメントとメンタルヘルス(不全)の関係を解明した研究を紹介する.
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