連載 働く人と健康―精神科臨床医の立場から・5
診療現場から見た労働関連自殺(いわゆる「過労自殺」)
天笠 崇
1,2
1メンタルクリニックみさと
2京都大学医学部大学院社会健康医学系専攻健康情報学
pp.358-361
発行日 2009年5月15日
Published Date 2009/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101557
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はじめに
2000年3月25日,「電通過労自殺最高裁判決」1)を伝える記事が,各紙新聞1面トップを飾った.過労自殺された息子さんの父親(原告)と,急逝された藤本正弁護士2)の後を引き継いだ代理人川人博弁護士とが,判決に臨むため,裁判所の階段を上っていく写真3)が,筆者の脳裡に鮮明に焼き付いている.すでに「karoshi」はそのまま英語で通じるが,この労働裁判史上歴史的な判決をさかのぼること2年前に刊行された著作4)のタイトル,『過労自殺』の言葉が,また新たに世界に向け発信された瞬間だった.1997年に地方公務員課長職の労災申請用の意見書を皮切りに,今日まで筆者は,意見書および鑑定書を作成することで,労働関連自殺,いわゆる「過労自殺」事例に継続して関わってきた5).本連載読者の関心にいかほど沿うか正直心もとないが,本稿では,働く人の健康が最も阻害された態様である労働関連自殺について,筆者が最近考えていることを述べてみたい(裁判所へ提出する文書を鑑定書,労基署等へ提出する文書を意見書と通常呼ぶが,以下本稿では両者を単に「意見書」と記載する).
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