特集 憲法と公衆衛生
〈人権と公衆衛生〉
ハンセン病患者と人権―その歴史からの教訓
大谷 藤郎
1
1国際医療福祉大学
pp.28-32
発行日 2008年1月15日
Published Date 2008/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101228
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わが国は人権尊重の念が弱い
人権とは,人が人間として生きている印し,社会に生きる限り,誰もが平等に持っているとされる.その内容は,人間の尊厳,自由,その他生きるための様々な証である諸権利を包括している.
高い理念の人権尊重を掲げた日本国憲法が,半世紀以上を経たにも拘わらず,また世界人権宣言や国際人権規約が国際的に成立したにも拘わらず,欧米に比べると,わが国の政治をはじめ一般社会には,民主主義はともかく基本的人権について,正しい認識と尊重の念が弱い.そのためハンセン病を始め精神障害,その他の難病,障害を持つ人々など,弱い立場に置かれた人々に対する社会的処遇は極めて遅れている.更にその上ここ数年の政治傾向は,市場原理主義や財政至上主義に名をかり,弱い立場の人々の負担を重くする障害者自立支援法の施行や,社会保障制度見直しの動きなど,遺憾に思うだけでなく,人権侵害のおそれを加速させている.
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