連載 グローバリゼーションと健康・5
グローバリゼーションとハンセン病
湯浅 洋
1
1笹川記念保健協会財団
pp.401-405
発行日 2005年5月1日
Published Date 2005/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100090
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医療問題としてのハンセン病
公衆衛生問題として捉えられた感染症としてのハンセン病そのものは,元来グローバルだったものが,ローカリゼーションの道を辿って,現在では,地球上のごく限られた局地にしか存在しない問題になったと言える.世界の先進国はもとより,発展途上国の大半でも,ハンセン病が現在重要な問題として一般の人々の間で認識されている例はほとんどない.大半の人たちは,その存在すら知らないと言える.
しかし,ハンセン病は元来グローバルな存在で,世界のあらゆる人種の中でハンセン病に患らないのは,エスキモー人たちだけだと言われてきた.紀元前数世紀から数十世紀のエジプト,インド,中国等の古文書にも,明らかにハンセン病とわかる病気の存在が記されている.また一部には明らかに他の病気との混同はあるものの,旧新約聖書に「らい病」の記載がある.そこに記されている古代イスラエル人たちが示したハンセン病患者への拒否反応は,その後世界各地,あらゆる人種またはすべての宗教下でも起こり,共通したものである.その見地からは,あらゆる疾病の中で,もっとも古くから世界各地で人々に恐れられ,人類共通の反応行動を起させた,グローバルな問題だったと位置づけることもできる.
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