特集 超高齢社会の地域医療制度の展望
わが国の地域プライマリケア体制の構築
池上 直己
1
1慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室
pp.924-927
発行日 2007年11月15日
Published Date 2007/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101187
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今,なぜプライマリケアか?
プライマリケアに対する関心は,75歳以上の高齢者に対して2008年度に高齢者医療制度が創設され,こうした状況下で総合的に診る医師の必要性を鑑みて,「総合医」を新たな標榜科目として設け,その教育を支援したいと表明した辻前事務次官の講演により一段と高まった1).確かに高齢者は複数の病気を持っていることが多く,入院の場合と同様に,在宅においても主治医を決め,処方や検査の指示を一元的に管理するメリットは大きく,総論として異論はないであろう.
しかしながら,現状では患者は,例えば高血圧症は内科医,腰痛は整形外科医,白内障は眼科医をそれぞれ受診しており,このうちの1人の医師が主治医として医学的管理の責任を持たせようとしても,他の医師の診療に介入することに躊躇するであろう.また,仮に「総合医」が将来実現できたとしても,内科以外の整形外科や眼科等の診療所医師,および病院,特に中小病院の医師が現在果たしている役割を十分に考慮する必要がある.
本稿では医療制度改革によって構築される新しい枠組みの中で,地域プライマリケア体制を整備するための課題を整理する.具体的には,各都道府県における医療費適正化計画は,医療計画,健康増進計画,介護保険事業支援計画の3つの計画が整合性を持って達成されることになっているので,これら3計画ごとに,プライマリケア医の役割について,諸外国における状況を参照しながら検討する.
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