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わが国の高齢化率はすでに20%を超えたが,中山間地・過疎地においては40%を超えているところもあり,すでに厳しい社会構造の変化が見られている.とりわけ生活に密着した地域医療や介護の問題は,地域によってその格差が拡大している状況が浮き彫りになってきた.しかし今後は,都市部での急速な高齢化の進展と,一方で過疎化の進行,そしてひとり暮らしの増加が見込まれており,特にインフラ整備の整っていない都市部での地域医療体制は大きな課題を抱えることになると予測される.
そのような中で,低迷する少子化と相まって,年金・医療・介護といったいわば社会保障制度は変革の転換点にあるが,医療制度改革・介護制度改革の方向を間違えば医療崩壊の危機は免れない.特に保険財源確保が先にありきのような「後期高齢者医療保険制度」の創設や,療養病床削減等による「地域ケア体制整備構想」などが進められているが,これらが高齢者のための真の地域医療の確保策になるのか,異論もないわけではない.
誰もが等しく年をとるが,あまねく高齢期は健康長寿でありたい,たとえ要介護状態になっても死の瞬間まで自分らしく,生き生きとWell-Beingな状態でQOLを確保し自己実現を図りたい,という願望を持つ.
そして時代の要請は,すでに高齢者医療に「医学モデル」から「生活モデル」への転換を余儀なくしており,その中で,看護職はまさに“ライフサポーター”として,予防からターミナルケアまでマネジメントし,ケアできるようなトータルな役割が期待されていると言える.保健医療介護の制度改革は看護職にとっても,これまでの実践に依拠しつつも“新たな価値と信頼の創造”という局面だととらえることができるのである.
超高齢社会こそ看護の時代,そしてチームケアの時代ではないかと思うゆえんである.
本稿では医療や介護制度改革の中で変化する看護職の役割を整理し,地域医療を推進するチームケアについて,筆者が視察したデンマーク・フランスの地域医療提供体制を紹介しながら,わが国の今後の課題について見ていきたい.
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