特別寄稿
介護予防筋力トレーニング―高齢者の健康づくり
大渕 修一
1
1北里大学医療衛生学部理学療法学専攻
pp.127-131
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100808
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ポスト介護保険の重要課題―介護予防
介護保険も導入されて,はや2年が経とうとしており,地方自治体では見直し作業が本格化しています.この介護保険によって,さまざまな議論はあるものの,身体や精神に障害を持つ人を社会で支えていく枠組みができました.次の課題は,介護を必要とする人をいかに少なくするかにあるように思います.誰しも,人に世話をしてもらいながら暮らしたいとは思ってはいないでしょうが,現在要介護者と要支援者を合わせると約12%の高齢者が,生活に何らかの支援が必要な状態だと言われています.この支援を必要とする人の割合を減少させなければ,高齢人口が増えるに従って,社会保障費を圧迫してさまざまな弊害が広がることが懸念されます.そこで,これからの社会を安心して暮らせるようにするために,要介護となることのないように予防する働きかけが必要となると考えています.
ところで,介護保険は心身機能が低ければ低いほど,高い給付金を得るシステムです.これは,心身機能が高いことをよしとする定義に従えば負のインセンティブということになります.実際に,介護保険の見直し判定を行っていても,介護度が上がることは少ないのではないでしょうか.また,一次判定で介護度が上がったとしても,給付金を下げることは市民からのクレームにつながりやすいので,行政的な判断を勘案して介護度の引き下げはしないのではないでしょうか.つまり,高齢者が安心して暮らすためには介護保険だけでは不十分であり,健康で自立した生活を送るための,正のインセンティブとなる仕組みが必要ということになります.
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