特別寄稿
現代の健康問題における安全・安心の設計
林 謙治
1
1国立保健医療科学院
pp.539-542
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100605
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
危険から身を守ることは生き物である以上当然の防衛反応である.太古の昔から人類がサバイバルして来られたのは,まさにこの防御機制のおかげである.防御機制の組織的対応は,現代では「防災」と言っている.文明の黎明期以前では,「危険」の圧倒的多数は天災や外敵であることは想像に難くない.文明の発達により集落・村落から都市へと人口が密集化するにつれ,天災は人災によって被害は増幅され,直接人命に脅威を与えるほか,生活環境の破壊を通してますます大きな健康被害をもたらす.もちろん天災は今でも脅威であり,台風の進路が変えられるわけでもなく,地震がやってくるのを防ぐこともできない.ただ,台風や津波の予報は襲来以前に可能であるので,事前の備えはある程度できるという違いがある.この違いは防災上きわめて重要であることは言うまでもない.
「現代の健康問題における安全・安心の設計」を考えるときに,次元は異なるがもう1つ見落としてならないのは,社会システムの崩壊によりもたらされる健康被害である.現代社会は生活のあらゆる側面について効率的なシステムを構築してきた.このシステムをわれわれは近代化と呼んでおり,これにほぼ全面的に依存して生活するようになっている.それがゆえに,システムが崩壊したとき,生活への影響は計り知れないほど深刻な事態に陥る.ここではまず,自然災害と環境災害および両者のインターフェースの問題から議論をはじめたい.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.