海外事情
イエメン山岳地域の“血の病”―文化人類学調査の結果から
伊達 潤子
1
1山口大学大学院医学研究科
pp.920-923
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100514
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イエメン共和国は,西を紅海,南をアラビア海,北をサウジアラビア,東をオマーンに面した,アラビア半島の南端にある,面積53万2,000km2を持つ国である.公用語はアラビア語,国教はイスラームである.国の首都であるサナアは,高度2,250mの,山岳地帯に囲まれた盆地に位置する.2001年におけるイエメン共和国の人口は1,886万2,999人で,そのうち159万0,624人がサナア市に住む.2001年の平均余命は57.45歳,1999年の10歳以上非識字率は47.2%,1997年の乳児死亡率75.3人/1,000人,同5歳未満小児死亡率104.8人/1,000人である1).
近年の病院・医師・薬局等の施設の増加によって,サナア住民は近代医学にアクセスすることが比較的容易になった.サナア周辺山岳地域に住む部族民にとっても,道路の整備とともに自動車による移動が一般的になるにつれ,サナアにある医療施設まで行くことは,費用がかかるにしても可能になった.しかしこの事実は,人々が従来の診断治療法を捨てて,近代医学だけに頼るようになったことを意味してはいない.生薬による治療法や,瀉血吸角療法,焼きごて療法などは,依然として人々の身近な治療として機能している.
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