連載 New Public Healthのパラダイム―社会疫学への誘い・7
生き抜く力―社会と身体的健康をつなぐもの・(3)
近藤 克則
1
1日本福祉大学社会福祉学部
pp.562-568
発行日 2004年7月1日
Published Date 2004/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100431
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生きるのは,大変である.仕事もだが,家事も育児も,職場・家庭内の人間関係も,私たちに緊張をもたらす.それらを上手くこなさなければならない.さらに病気や左遷,死別など,喪失・挫折体験を伴うライフイベントに加え,将来への不安(筆者の場合には迫ってくる連載原稿の締め切り)など,緊張やストレスの原因(ストレッサー)を数え上げたらきりがない.しかし,端から見ると「ストレスに強い」あるいは「まるで緊張感を楽しんでいる」ように見える人すらいる.ストレスに対処する能力,あるいは「生き抜く力」には,人により大小があるように思われる.
前号まで,社会経済的因子が身体的健康に影響しており,その間をつなぐものとして,うつや主観的・心理的因子・認知が重要であることを述べてきた.その根拠は,①同じ健康状態でも,それをネガティヴにとらえ(認知し)ている主観的健康感が低い人では死亡率が高いこと,②逆にポジティヴに認知すればうつ状態も改善しやすいなど,健康を維持・回復しやすいことが実証されていること.そして,③社会経済的条件に恵まれない人ほど,ネガティヴな認知をしていることが多く,うつ状態や不安で苦しんでいる人が多い傾向があることであった.
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