連載 公衆衛生ドキュメント―「生きる」とは何か・24・最終回
―水俣病から50年⑥―一人の少女の死,最後の撮影記録
桑原 史成
pp.166
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100265
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掲載の写真は,69巻12号(2005年)の本欄に掲載した,同じ家族の17年後(1977年)の記録写真である.父親に抱かれた女性は胎児性の水俣病患者で,かつての幼女は成人の年齢に成長していた.しかし,水俣病の呪縛からは解き放たれることなく,依然として父母の介護のもとで日々を送っていた.
この写真は,彼女が「成人の日」を迎えた1月15日の夜に,家族や親戚,知人などが集った祝の宴の後で撮影したものである.業病をもって出生した薄幸な彼女だが,撮影時に満面の笑みを表わしてくれたのは,今でも印象深く記憶に残っている.その年の暮れに彼女は肺炎を併発してこの世を去っていった.私が記録した最後の撮影になってしまった.
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