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ローランサン「二人の少女」
pp.67
発行日 1965年4月10日
Published Date 1965/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203381
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マリー・ローランサンは1855年の10月にパリで生まれました.ひどい近眼でしたが,人形の大好きなかわいらしい少女でした.20歳になるまで,リセ・ラマルチーヌという学校で学びましたが,ここで絵の才能があることを認められて,将来画家になるためにユムベールの絵画研究所にはいり,デッサンの手ほどきを受けました.そのころから,当時は無名だったピカソやブラックとの交友をもち,また多くの詩人や文学者たちとも交わりましたが,なかでも「ミラボー橋」の絶唱で有名な詩人アポリネールとの交わりは,彼女を立体派に接近させました.しかし,彼女は立体派のつめたい知性の構成をきらい,独自のわがままなスタイルで,甘く感傷的な女性のうたばかりをうたいました.1907年のアンデパンダン展で画壇に出たのですが1912年と1920年の個展で彼女の名声は決定的なものになりました.彼女の絵には造形的なものは求められませんが,ほのぼのとした,今にもこわれそうな美とエレガンスによって,パリの人びとを魅了しつくしたのです.バラ色の唇,虚無をみつめているような視線のない黒い瞳,鼻を描かない女狐のようなあどけない顔,透明な真珠色のはだ,2人の少女はこの世に住むにはあまりにも美しすぎます.それは,だれの心のなかにでも宿っている永遠の少女像なのでしょう.
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