特集 “偶然性”に本質を見出す人たち 安全基盤でこそ何かが起こる!
—当事者研究とオープンダイアローグ的対話実践—自助グループ主宰者が考える安全基盤と偶然性
横道 誠
1
1京都府立大学
pp.370-374
発行日 2025年9月15日
Published Date 2025/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134327610280050370
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筆者は専門家としては文学研究者だが、精神疾患(自閉スペクトラム症、ADHD、アルコール依存症)の当事者として、10種類の自助グループを主宰している。そのうち7種類では当事者研究を実施しており、1種類ではオープンダイアローグ的対話実践を行っている。自助グループと言えば、その典型はアルコホーリクス・アノニマス(AA)などの「アノニマス系」で、「言いっぱなし聞きっぱなし」と呼ばれる、参加者の発言に対してほかの参加者がいっさい応答しないコミュニケーション様式がよく知られている。だが筆者が主宰する自助グループのほとんどは「対話型自助グループ」で、「言いっぱなし聞きっぱなし」を採用しているグループは1種類しかない。
「アノニマス系」の「言いっぱなし聞きっぱなし」は、ミーティングの安全基盤として機能している。自身の発言に対していっさい感想、意見、質問、批判等が投げかけられないために、それぞれの参加者は安心安全のもとに自由に発言できる。初心者がやってしまいがちなこととして、例えば「さきほど○○さんが、××と言っていましたが」と自身の語りで他者の語りに言及する事例が発生するが、これも望ましくないこととして、常連の参加者は避けるようになる。あくまでじぶんの話に集中することが重要視される。筆者が推進する対話型自助グループは、まさにこの安全基盤という問題に関して、ゼロからの設計と整備を必要とした。具体的に言えば、グランドルールの構築と運用に注力してきた。

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