特集 先生は大変だ―「先生たち」のメンタルヘルスを通して見えるもの
治療関係における分断―当事者性と偶然性,根源的罪悪感
富樫 公一
1
1甲南大学
pp.854-856
発行日 2024年12月5日
Published Date 2024/12/5
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トラウマは分断世界である―私は,『当事者性(being player-witness)』概念の考察をそこから始めた(Togashi, 2020, 2023 ; 富樫, 2019)。
私が述べるトラウマとは,世界のあり方そのものである。それは,言葉によって作られた世界ともいえる。被害者-加害者,善-悪,当事者-専門家など,この世のありようのすべてがそうである。言葉が分断を作り,分断が世界を描く。
言葉が分断を作るとは何か。自然災害や紛争,社会的混乱によるトラウマは,助かった者と助からなかった者,殺す者と殺される者,利益を得た者と損をした者など,人間関係の分断の中で発展する。虐待や犯罪被害によるトラウマも,被害者と加害者,体験を知る者と知らない者の分断の文脈にある。小学生から繰り返し性虐待を受けてきた40代の日本人女性患者理沙の語りの前で私は,体験した彼女と体験していない自分との分断の中に置かれた。(Togashi, 2023, 2024)。日常生活のトラウマも同様だ―富める者と貧しい者,優秀な者と劣った者,優位者と劣位者,評価者と被評価者といった分断がある。

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