書評
ケアの意味を見つめる事例研究—看護実践の知を探求する研究方法論
酒井 郁子
1,2,3
1千葉大学大学院看護学研究院先端実践看護学研究部門 高度実践看護学講座
2千葉大学大学院看護学研究院専門職連携教育研究センター
3千葉大学医学部附属病院総合医療教育研修センター
pp.805
発行日 2025年9月10日
Published Date 2025/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091713550350090805
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世界観の変容から世界線の移行へ
山本則子氏は2000年代の数年間,千葉大学看護学部の准教授として在籍されていた。同時期に私も准教授として在籍し,学生の授業評価や学術推進の仕組みづくりを共に行った。「田んぼのあぜ道を爆走するポルシェ」という異名は,私が彼女の仕事ぶりを評して付けたものだ。それ以来,折に触れ多くの対話を重ねてきたが,その中で彼女は何度か,「この事例研究の仕事は本来,千葉大が取り組むべきだった」と語っていたことを今も忘れない。
本書『ケアの意味を見つめる事例研究』は,看護の実践知と学術知の架け橋という次のステージを明確に示す1冊である。第1部,第2部では,実践に内在する意味を掘り起こし,事例研究という方法論によって,その意味を可視化・言語化する営みが丹念に展開される。そして本書の価値は,「事例研究の方法」を分かりやすく解説するだけにとどまらない。特に注目すべきは,第3部の第7章,第8章において,事例を学術的に洗練させ,査読に耐えうる論述とし,研究論文として社会に開示するための具体的な方法を提示している点である。

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