連載 作業療法を深める・第107回
アクセシビリティを「創造」するという視点
田中 みゆき
Miyuki Tanaka
pp.1326-1330
発行日 2025年11月15日
Published Date 2025/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590121326
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はじめに
わたしはこれまで,展覧会やパフォーマンスの企画や映画制作,ゲーム開発等,主に文化芸術やデザインの分野でアクセシビリティに取り組んできた.そこで実感してきたのは,アクセシビリティとは単に障害のある人々のための「配慮」ではなく,人間の多様な感覚や生活の仕方を社会に開いていく「創造的営み」である,という点である.
作業療法士の方々が日々の臨床で取り組むのは,まさに人の営みにかかわる実践であり,その人らしい活動の再構築を支援することである.その点においてアクセシビリティの議論は,作業療法の実践と多くの共通点をもっている.本稿では,わたしのこれまでの活動を紹介しながら,芸術文化からの視点を軸に,作業療法士がアクセシビリティの実践からどのような示唆を得られるかを考察したい.本稿の観点は,ICF(国際生活機能分類)が強調する活動・参加と環境因子の相互作用とも整合する.アクセシビリティを“創造”として捉えることは,まさにその接点を拡張する試みである.

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